2013年6月30日(日)、劇団「風雲かぼちゃの馬車」光風組(女子部?)特別公演「青春スープレックス!?」を観てきました。楽日の公演でした。
今回、特別公演と銘打っているように、普段の舞台とは趣向を変えて、男優はほとんど出演しておらず、光風組の女優たちがキャストのほとんどを占めていました。かぼちゃの女優は数が限られているためか大半は客演でした。
今回の登場人物10名のうち5名がダブルキャストで、自分が観たのは主役の恐凶子(おそろしきょうこ)を宮内咲希子さんが演じるBキャストの公演でした。
会場に入ると、まず強い印象を与えるのが舞台の中央に設置されたプロレスのリング。客席最前列からは1mほどの距離だったでしょうか。このリングがそのまま劇のメインステージでした。
冒頭から叫ぶような長ゼリフ、主人公・恐凶子の理不尽なまでの暴力性、次々登場するクセのあるキャラクターたち。学生女子プロレスサークルに集う一風変わった、アツい人たちを描いた作品で、女優たちがケバい化粧と髪型、ボンデージやヤンキーファッションで1時間半ほど、走って跳んで殴って蹴って泣いて叫んで、躍動しまくっていました。いつものような力技で観客を物語に引きずり込んで、最後まで疾走するようなテンポで舞台は進みました。
「青春」と言う文脈でしか、ほぼ許容されないアウトローたちの饗宴。先輩と後輩、弱者と強者と言った単純かつ理不尽な力関係で結びつくキャラクターたち。そのエゴイスティックな暴力性も、敗北や挫折や喪失感を覆い隠すための虚ろな鎧であることが徐々に暴かれて行きました。ラストではかつて凶子をその道に引き込んだニシムラとの恋愛が成就すると言うストーリー。でもいろいろなことが置き去りにされたまま、しかも幸福を掴んで喜んでいるとは決して思えない凶子の姿に、何かモヤモヤしたものを抱えたまま舞台は終わりました。おそらくそのモヤモヤも、脚本の狙いのうちだったのだろうと思います。
今回の舞台は設定とストーリーに少し難を感じました。舞台の冒頭から登場していた、凶子の幼なじみのゴッチが実はすでに死んでいて、幻影か幽霊として登場していたことが後に判明するのですが、判明したあともしばらく、その解釈で正しいのかどうかを掴みきれませんでした。そのゴッチを殺した人物はいったい何者で、どこから来てどこへ行ったのか、結局明かされないままのようでした。凶子をプロレスの世界に引き込んだ男・ニシムラと迎えるエンディングの唐突さも少し気になりました。その設定やストーリーの無理をアタマの中で処理しながら観ていたために、何度か話を見失いかけてしまいました。ストーリー自体は破綻していませんが、難解さと唐突さが目立ったと言う印象です。
観終わったあとで、この話がラブストーリーなのか、スポ根なのか、不条理劇なのか、悲劇なのか喜劇なのか、それともそれら全てなのか、なんとも掴みきれませんでした。混沌とした設定とストーリーとキャラクターだったので、共感や感情移入できた観客はあまり多くなかったかもしれません。少なくとも自分はそれらとは程遠い心情で鑑賞していました。
また中央に組まれたリングのロープが偽物(ビニールホース?)だったので、ロープの反動を使った技などは少し迫力を欠いていました。少しでも体重をかけられるロープを張っていたら、だいぶ迫力が違っていたと思います。
今回も役者は粒揃いでした。
筋太郎役の佐藤ららるさんは、体育会系ゆえの人間関係の濃密さ理不尽さに翻弄される後輩女子の、切なさ・やるせなさをうまく表現していました。佐藤ららるさんは客演です。
恐凶子役の宮内咲希子さんは、喪失感や敗北感を抱えたまま無軌道な暴力性でそれらを覆い隠そうとする、不安定で凶暴で悲しい、難しい役を見事にこなしていました。
カントク役の男優、丸山夏輝さんは、持ち前の風貌と雰囲気から、ストーリーとは直接関係ない役で強い印象を残しました。
今回内容に少し謎と不満が残りましたが、全体としては楽しめる舞台でした。
次回もまた観に行こうと思います。
(吟遊詩人)
風雲かぼちゃの馬車
2005年12月、主宰、土井宏晃を中心として創立
感情に訴えかける作風で観客も暴風に巻き込み中
主宰・演出家:土井宏晃
劇作家:重信臣聡
http://fuuunkabocha.yokochou.com/