コンサート・ホール作りの技術的変遷
本稿も今回で5回になりました.
日本のコンサート・ホールについて系統的に取り上げ特にクラシック音楽に関して,日本の音の成り立ちを考えてきました.
ここまで, 日本のコンサート・ホールについては,神奈川音楽堂と東京文化会館を取り上げましたがこれらのホールと,今回以降紹介するホールは音響設計手法において大きな違いがあります.
1961年に東京文化会館ができたのですが翌年1962年にレオ・リロイ・ベラネックが著した「音楽と音響と建築」の中でムジークフェラインザールが世界最高音質のコンサート・ホールである,と評価した本が出版されました.
この本で新しい音響技術が紹介され, これ以降のコンサート・ホールはその技術を考慮して作られるようになりました.彼が提示した音響技術の重要さと共に, 日本では,それ以後作られた新しいコンサート・ホールには,「最高音質のムジークフェラインザールをどう考えて新しいコンサート・ホールを作ったか」,という1文章が必ず入ることになったのです.
この本がバイブル的存在になり,ムジークフェラインザールがコンサート・ホール作りの目標になったのです.
本記事は『ラジオ技術』2013年5月号に掲載されています。